圧倒的に勝たなければ、
Hondaじゃない。

圧倒的に勝たなければ、
Hondaじゃない。

名田 悟

HRD/ホンダレーシングディベロップメントUK
※インタビュー内容は取材当時のものです。

1999年に新卒入社。本田技術研究所に配属され、1年目からモータースポーツのエンジン制御を担当することになった。2003年よりF1のプロジェクトに参加。イギリス駐在時にはレースチームでサーキット現場での実走を担当し、レースエンジニアとしてジェンソン・バトン氏を支えた。第1ブロックのマネジャーとしてPU開発の指揮を執ったのち、 ホンダレーシングディベロップメントUKへ駐在。

池ヶ谷 潔

HRD Sakura
※インタビュー内容は取材当時のものです。

大学時代は、イギリスの大学にてモータースポーツを専攻。2004年に帰国し、大手自動車メーカーでキャリアをスタートさせた。総合技術研究所でのエンジン性能設計や量産車の部品設計に携わり、2013年よりSUPER GTのプロジェクトに参加。モータースポーツの世界へと足を踏み入れた。その後、F1への想いが再熱し、2016年にHondaの一員となった。

- ミッション -
地上最速。その夢を掴むために。

- ミッション -

地上最速。その夢を掴むために。

2018年6月19日。あるニュースリリースが世間を騒がせた。HondaがRed Bull Groupと新たな契約を締結。2018年より提携しているScuderia Toro Rosso に加え、同レッドブルグループ傘下であるRed Bull Racingにもパワーユニットを供給することを発表したのだ。「2チームとの連携は、過去4シリーズでもなかったこと。今、Hondaにとって新たな挑戦が始まろうとしているんです」と語るのはマネジャーを務める名田悟だ。Red Bull Racingと言えば2004年にF1に参戦し、わずか数年後に4連覇の快挙を成し遂げたトップチーム。パワーユニット開発を統括する名田にとっても、これほど心躍るニュースはなかったはずだ。「モータースポーツでは結果がすべて。勝つために出場している以上、勝てるパートナーを選ぶことになります。そういう意味で言えば、“勝てるパワーユニット”としてHondaの技術がトップチームに認められたということ。今後のレースが楽しみではあるものの、私たちが背負う責任は極めて大きいものだと感じています」。

世界最速のパワーユニットをつくる。その使命を前に、名田はどんな戦略を構想しているのか。「すべてを語ることはできませんが、開発力の強化が急務であることは間違いありません。2チームへの供給が決まった以上、これまでの2倍の人員が必要となりますし、世界最速の夢を掴むためにはHondaだけでなく外部の方の知見も積極的に吸収していく必要があります」。名田が見据えているのは、1勝ではなく常勝の未来。圧倒的に勝たなければ、Hondaが勝ったとは呼べないと言う。「現状、レッドブルレーシングは、世界一の車体をつくる技術を持っています。1勝や2勝ではマシーンの性能のおかげだと言われてしまう。シーズンを通じて勝つこと、つまり王冠を勝ち取らなければHondaが世界を驚愕させたことにはならないのです」。

覇権を争うなかで、名田はどんな人材を求めているのか。「世界一になる。その夢を一緒に駆け抜けてくれる方にお会いしたいと思っています。エンジン設計領域、テスト領域での経験があれば、たとえモータースポーツの経験をお持ちでなくてもかまいません」。F1はエンジニアにとっても厳しい世界だ。一戦一戦、必ず結果が出る。全世界のファンが注目するなかで、ライバルに完敗することもあるだろう。しかし、そんな生みの苦しみを乗り越え、世界一を獲得するためには強烈な目的意識が必要なのだ。「世界一になる。心にそんなタフなエンジンをお持ちの方にこそHondaの門扉を叩いてほしい。世界トップクラスの開発環境。手を挙げた者にチャンスを与える風土。夢を叶えるために必要なものはすべてここにあります」。

- 職種内容とやりがい -
日本の夢を、世界の表彰台へ。

- 職種内容とやりがい -

日本の夢を、世界の表彰台へ。

今、世界一を目指すエンジニアはどんな景色を見ているのか。トップチームへのパワーユニット供給。言うのは簡単だが、決して簡単な道程ではないはずだ。「正直、Hondaのパワーユニットはまだまだ世界一とは呼べません。こうした状況のなかで、猛者ぞろいのライバルたちをどうやって出し抜いていくのか。エンジニアとしては腕が鳴りますね」と笑顔を見せるのは、パワーユニットの性能設計を担当する池ヶ谷潔だ。パフォーマンスグループが掲げるミッションは、“世界一のパワーユニットを永続的に創出する集団”になること。現在、池ヶ谷は設計とテストが1セットになったチームで、Hondaパワーユニットのパワー向上に取り組んでいる。「パワーユニット=競争力。私たちの仕事は、文字通りレースの結果を左右するもの。もちろんプレッシャーはありますが、その分、世界一を決めるレースに参加しているという確かな手応えを感じることができます」。

そんな池ヶ谷には、今でも忘れられないレースがある。2017年シリーズのメキシコグランプリだ。「現地の標高は2000m。富士山の5合目ほどの場所でレースを行います。あまりに過酷な状況下のため、テスト段階からパワーユニットの部品が壊れてしまうなどの問題が発生していました」。パフォーマンスを下げれば、レース終了までトラブルが起こることはない。しかし、それでは勝つこともできない。「パフォーマンスを維持しながら、部品の耐久性も維持する。その針の穴ほどしかないポイントを探り続けました」。そして、池ヶ谷の努力は実を結ぶことになる。何度も何度もシミュレーションした結果、ピンポイントの妥協点を見つけることに成功したのだ。当時、池ヶ谷は入社1年目。経験の浅い中途入社のアイデアにも全員が耳をかした。「他の設計者も『ここに解があるかもしれない』と後押ししてくれましたし、テスト領域のプロもあきらめずに何度もチャレンジしてくれたんです」。結果、Hondaのパワーユニットを搭載したマシーンはメキシコグランプリ決勝で10位入賞。貴重な1ポイントを獲得することになった。「私のアイデアというより、チームで勝ち取った1ポイント。やりきった。その余韻がいつまでも両手に残っていました」

F1で勝つ。その夢は、Hondaだけの夢ではない。日本人のファンにとって、日本人のエンジニアにとって、日本の技術力を世界に示すことには大きな意味があるはずだ。「もちろんHondaの一員として王冠を手にしたいという想いはあります。ただ、日本のパワーユニットが勝つことにはそれ以上の価値があると思うんです。いつかHondaの責任を果たす。今は、この夢を実現させることが私の使命だと思っています」。

- キャリアストーリー -
予想を超える、F1の世界。

- キャリアストーリー -

予想を超える、F1の世界。

F1の世界で技術競争に励む池ヶ谷。しかし、彼も最初からこの舞台の住人だったわけではない。「以前は大手自動車メーカーに勤めていました。Hondaに入って初めてF1を担当することになったんです」。そんな池ヶ谷はなぜ転職を決意したのか。「当時は35歳。マネジメントの道に進むか、エンジニアリングを極めるか。今後のキャリアに迷っていたんです」。そして、ある先輩から届いたメールが池ヶ谷の人生を大きく変える。Hondaの求人情報を伝える、無骨な文面だった。ただ、その裏に“モヤモヤしているのなら、やりたいことに挑戦してみろ”という力強いメッセージを感じたと池ヶ谷は振り返る。「そのとき思い出したんです。中学生のときに見たレースを。世界中の人々が見守るなかで、技術と技術が激しくぶつかり合う。この華やかな舞台に自分も立ちたい。そんな子どものころに描いた夢を、今こそ叶えるべきなんじゃないかって」。もし求人が出るタイミングが異なれば、池ヶ谷はこの場所にいなかったかもしれない。「あのとき、あの瞬間に、先輩のメールが送られてきた。正直、それが転職の決め手になったんだと思います」。

F1の経験はなかったものの、モータースポーツの経験はある。池ヶ谷は誇りを胸にHRD Sakuraの門をくぐった。しかし、待っていたのは“2つの予想外”だった。「当時、Hondaは世界最先端技術の国内初導入を検討していたんです。この研究の意義は理解していたものの、まさかこんなチャレンジングな領域に自分が挑戦することになるとは思ってもいませんでした」。もうひとつの予想外は、エンジニアたちの高度な技術力。「Hondaでは30代前半の若手が研究開発においてリーダーシップを発揮しています。誰もが自ら手をあげ、アイデアをレースに搭載している。『なぜなに』を繰り返し、本質的なメカニズムを探究している。Hondaでぶつかった“2つの予想外”は、わずか入社2週間で『自分がやってきたことをリセットしなければ』と腹を括るほどの衝撃でした」。

入社後すぐにF1の洗礼を浴びた池ヶ谷。しかし、高速でトライ&エラーを繰り返す世界で揉まれ、現在ではHondaの一翼を担うほどのエンジニアに成長した。「2018年シリーズは全21回のレースがあります。月2回以上、グランプリが開催されるため、1日でも立ちどまっていると物事についていけなくなる。もちろん厳しさもありますが、これだけの速度でPDCAを回していると自分の予測が裏切られることも多くなりますし、その裏切りから「そっちか」という大きな発見をすることもあるんです」。Hondaでの成長スピードは格段に速いと自信に満ちた表情で語る池ヶ谷。彼のさらなる成長は、来年のグランプリで証明されるに違いない。

column

F1レース用パワーユニット(エンジン)開発

世界一のパワーユニット創出に向けたエンジンの研究開発●仕事詳細:【設計領域】パワーユニットのレイアウト及びコンポーネント設計(シリンダーブロック、ピストン、ポンプ等)【開発・テスト領域】テスト機を用いた実機検証、評価、解析。様々な項目における仕様選定。設計部隊への提案等。※両領域ともに、将来的には最適なシステム検討、コンセプト提案まで担当いただくことを検討。世界中のレース現場への帯同の可能性もあります。