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EVENT REPORT

人工知能学者 松尾 豊 氏×Honda
AIで実現する、
人とモビリティの新しい関係

Honda Advanced Tech Forum Vol.1

6月4日、Hondaの研究子会社である本田技術研究所は東京大学大学院・特任准教授の松尾豊氏と、次世代モビリティやロボティクスなど最先端の研究開発分野で活躍するHondaのエンジニアが、AI技術によって進化する「人とモビリティの新しい関係」について語るイベントを開催しました。様々な業界・業種の方にご参加いただき、盛況を見せた本イベント。当日の様子をレポートでお伝えします。

第一部

第一部では、基調講演として人工知能研究のトップランナーである松尾氏が登壇。「人工知能は人間を超えるか─ディープラーニングの先にあるもの」と題し、人工知能を取り巻く最新動向からディープラーニングをはじめとする技術の進化や社会の変化、そして自動車業界やロボット産業にどのようなイノベーションを起こしていくのかを語っていただきました。

以下、松尾氏の講演の一部を抜粋して紹介します。


「これまで人工知能の研究では、『子供のできることほど難しい』と言われてきました。高度な推論よりも、単純な認識や運動スキルのほうが難しいからです。例えば、積み木を拾って積むとか画像認識とかですね。コンピュータにはそれが難しかった。しかし、ディープラーニング(AI)の進化により、ここ3年くらいのあいだに一気にできるようになった。人工知能における一つの大きなブレークスルーです」

「医療、金融、教育といった既存産業では、これまでIT化やロボット化に積極的ではなく、データも取ろうとしてきませんでした。そこに対して、AIを絡ませた生産・仕事を担う機械・ロボットが現れれば、今までの多くの作業を自動化・効率化することが可能になります」

「Google, Facebookなどの情報路線は海外のほうが進化のスピードが速い。海外のほうが情報路線が強い理由は、英語圏はユーザーが多く、データがたまるからです。しかし、ロボット・機械などの運動路線は日本のほうが得意とするものだし、勝てる領域だと思います。例えば農業の収穫や間引きなどは人間が目で見て認識して判断しないと作業できないと思いがちですが、画像の認識機能が進化した今なら自動化するのは難しくありません。まさに日本のモノづくり産業が培ってきた経験や技術が強みとなるのです」

「日本は少子高齢化が進んでおり、労働力が不足していると言われますが、ディープラーニングによる認識技術、行動の習熟ができる機械・ロボットなどは、その解決策になります。素材や駆動系も強いといったモノづくりと相性がよく、日本の強みを活かせる。日本には優秀な人工知能研究者も多いので、今後の日本を幸せに導く新しい未来像を創っていってほしいと思います」

AI技術動向の最前線から、それが巻き起こす社会への影響について語っていただいたことで、技術が切り開く未来への期待感に会場が包まれました。

また、松尾氏によるセッション終了後、本田技術研究所 代表取締役社長の松本宜之(まつもと よしゆき)から、ご挨拶と6月2日に発表されたHondaの新たな知能化(AI)の研究拠点「HondaイノベーションラボTokyo」を赤坂に設けることについて改めて紹介。本田技術研究所が進める知能化技術の強化などについて紹介を行い、第一部を締めくくりました。

第二部

第二部は、松尾氏とHondaエンジニアによるパネルディスカッション。本田技術研究所からは、自動運転・コネクティビティ・ロボティクスの3つの専門領域のパネリストが登壇。それぞれ人工知能を駆使した研究開発の取り組みについて紹介を行った上で、この3つの領域が融合した先にあるHondaの可能性・未来について、活発な意見交換が行われました。

登壇したHondaのパネリストは、ディスカッションを通じて様々な意見を交わしたのち、それぞれ以下の思いを語りました。

「自動運転の実現には人工知能の技術が不可欠です。人工知能に対して社会全体の期待感がどんどん高まっている。この期待にHondaも真正面から立ち向かっていき、人工知能の技術を活用し一日も早く自動運転をお客様にお届けしたいと改めて思いました」

「コネクティビティの領域は、AIを含めていかにスピードをもって製品やサービスを展開していくかが当面の鍵だと思うので、それを軸にHondaの戦略を構築していきます」

「ディープラーニングの先に新しい世界が開けていくことを実感しました。その中でも、ものづくりをしているHondaとして人工知能が入ることによっていろいろなモノが生まれてくるのではないかと。それを上手に融合することによって、新しい未来社会や人の役に立つモノができるのではないかということを改めて実感しました」

最後は松尾氏から以下の激励メッセージをいただき、第二部のパネルディスカッションを締めくくっていただきました。

「ディープラーニングと機械、モノづくりとの融合でAIはどんどん進化していくと思います。どれだけトライしていくか。人工知能をつくろうとすると、確実にここが本線です。そういう状況からみるとロボットとか、機械系のモノづくりをやってる人がうらやましくて仕方ない。ずっとやってきたところに、こんな根本的なチャンスが目の前にやってきて。違う分野の人がそこを学ぼうとすると相当大変なんですけども、これまで積み上げてきた技術があり、既に大きなアドバンテージがある。今後、モノづくりと人工知能の融合というのが、一番魅力的な領域になっていくんじゃないかなと思います。その中でも、自動車産業というのは巨大な産業ですし、技術も相当な蓄積がある。世界でこれだけ戦えている企業がほとんどない中で、これらの領域で研究開発と事業を展開するHondaの技術を、人工知能やディープラーニングの革命と融合させることで、さらに進化すると思います。いまHondaさんは自動車の会社ではありますが、自動運転の技術もロボットの技術も根本的には一緒なんだ、という具合に技術を融合し、もっとコンセプトを広げた概念の会社として、今後どんどん大きくなっていくのではないかと期待しています」

第三部

第三部、イベントを締めくくるのはHondaエンジニアとの交流会。さまざまなバッググラウンドの参加者から多くの質問や意見が出され、業界の枠を超えて活発に交流がなされました。参加者の方からは「自動運転のこれからの動向を知ることができ、エンジニアとの交流でHondaの考えを知ることが出来た」「人の移動手段は時代と共に移り変わるもので、そこに人工知能が絡むことで、また全然違った発展もあると思う。Hondaにはもっと広くモビリティメーカーとしてグローバルに発展してもらえれば、個人ユーザーとしても日本人としても嬉しい」とのご意見をいただきました。

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