ロボットが身近にいる日常は、つくれる。

ロボットが身近にいる
日常は、つくれる。

ロボティクス開発

斉藤陽子

ライフクリエーションセンター/完成機開発室/チーフエンジニア
※インタビュー内容は取材当時のものです。

2001年中途入社。大学では情報工学を専攻し、卒業後は通信会社に就職。デジタル回線網を使用したモデムのソフトウェア開発やスマートメーターシステムなど、当時の通信における最先端分野を約5年間経験した。なにか動くモノをつくりたいという想いを抱いていた際に、Hondaが発表したASIMOを見て、自動車だけではなく様々なモノをつくるワクワクをHondaに感じて転職。入社後はASIMOの開発を長く経験し、現在もロボティクス開発に従事している。2019年のCESにHondaが出展した、AI搭載のロボット『Honda P.A.T.H.*Bot(パスボット)』も手掛けた。

※ Predicting Action of the Humanの略。

- 職種内容とやりがい -
Hondaの技術で、まだ世の中にないロボットを。

- 職種内容とやりがい -

Hondaの技術で、
まだ世の中にないロボットを。

ロボット開発には答えがない。そして、それが醍醐味でもある。パーツひとつ、プログラムの一行までも試行錯誤を繰り返し、完成させたロボットに電気をとおす。つくったものが、動き出す。チーム全体が最も盛り上がる瞬間だ。けれど、一発目で考えていたとおりに動くことは皆無。失敗する度に原因を探し、改善をする。誰も答えは教えてくれない。その繰り返しだ。私はそんな毎日を、Hondaに転職した2001年から続けている。

私が長く開発に携わってきたのは、Hondaが2000年に発表したASIMO。世界初の本格的な二足歩行ロボットであり、発表以後も様々な改良が加えられてきた。HondaはASIMOで培ってきた姿勢制御やバランス制御、デバイスアクチュエーター、センシングといった様々な技術を活用したロボット開発を行っている。そして、チーフエンジニアとなった私はいま、プロジェクトの開発責任者として、チームメンバーとともに新しいロボットの開発に挑んでいる。

私の主な役割は、プロジェクト全体の推進や運営。どんな機能が必要か、どんな手段が必要かをメンバーと議論しながら進めている。私が専門ではない技術も当然ながら、ある。けれど、最終的にその技術が開発中のロボットにどう使われるのか、というゴールは決めることができる。それが責任者である私の仕事だ。

研究室にこもって開発をしていたころに比べれば、いまの立場になって、仕事のテリトリーは大きく広がった。ロボットを一台組み上げるために計画を立て、開発メンバーだけではなく、デザイナーや知財担当、購買担当といった様々な人を巻き込みながら、プロジェクトをよりやりやすい方向に動かしていくことができる。

社外のパートナーやお客様と一緒にモノをつくっていくことも、いまの立場になって経験した。実用化を目指すなかで、お客様の声を聞きながら開発を進めていけることは、私にとっては新鮮だった。世の中にまだないロボットを開発することが、そのお客様にとっては新しいサービスを生み出していくことにつながるのだ。

私は、ロボットがもっと身近にある社会をつくりたいと思っているし、ロボット技術は世界を変えられると信じている。Hondaが目指しているのは、日常生活のなかで人と共存していく、人に寄り添うロボット。だからこそ、四輪・二輪以外の暮らしや仕事に役立つ様々な製品を研究開発するライフクリエーションセンターに、完成機開発室がある。

- キャリアストーリー -
Hondaでの仕事は、ASIMOが教えてくれた。

- キャリアストーリー -

Hondaでの仕事は、
ASIMOが教えてくれた。

転職前は新卒で入社した通信会社で働いていた。インターネットと言えば、ADSL回線が普及を始めたような頃だ。モデムのソフトウェア開発や、デジタル回線網を活用した機械との通信など、通信分野での最先端技術に関わることは楽しかった。インフラを支えることにやりがいも感じていた。

そんな私が転職しようと考えた理由は、目に見えないものではなく、目に見える、動くモノをつくってみたいと思ったからだ。きっかけは、LEDや液晶を使ったちょっとしたテストで、自分のプログラムが動いているのを実感できる機会があったこと。それはただ光ったり、表示が変わるだけの本当に些細なものだった。それでも私のなかには、「モノをつくるってこういうことだな。すごい楽しいな。面白いな」という想いが芽生えたのだ。

クルマにまったく興味のなかった私は、2000年に発表されたASIMOによって、Hondaに興味をもった。クルマの会社とロボットが一致せず、それがむしろ「Hondaはなにをやっているのかわからない。自分が知らないモノに出会えそうだ」と思えてワクワクしたのだ。そして、面接では「なんでもいいので、動くモノをつくりたい」と言った。このときは、まさか私がASIMO開発室に配属になるとは思ってもみなかった。

入社後、新人の私に任されたのはモーター制御の基盤ソフト開発。私は通信を専門にやってきた人間だ。正直言って驚いた。わからないことだらけだった。そんなとき、前職ならわかる人が助けてくれた。私ができるように、色々と用意をしてくれた。だが、Hondaはそんな生易しいところではなかった。自分で知っている人を探して、わからないところを聞きにいく。できないことから逃げていては、助けてもらえない。だけど、逃げずもがいていれば周囲の人が手を差し伸べてくれた。自発的に行動し、自分の担当は最後までやり切る。それがHondaのモノづくりだった。

モーターが回ったとき、私よりも喜んだのは、新人の私に仕事を任せた上司だった。指導は厳しく怖かったけれど、そのときの顔は可愛らしくて、いまでも覚えている。その顔を見て、任された仕事で必死だった私は、自分がやりかたったモノづくりは、こういうことなんだと改めて思い出すことができた。この会社には、私と同じ想いの人がたくさんいた。

私はASIMOが人と共存する環境下での実用化を目指して、「自動機械」から周囲の人の動きに合わせて自ら行動する判断能力を備えた「自律機械」へと進化する過程にずっと携わってきた。歩行アシストや原発の調査に使われたロボット、周囲の状況を認識して人や障害物を避けながら目的地まで最適ルートで移動するAI搭載のロボット『Honda P.A.T.H.Bot(パスボット)』。ASIMOの開発で学んだ技術も、Hondaでのモノづくりのありかたも、すべてそこに生きている。

ロボット開発は自分で未来を想像して行う仕事だと、私は思っている。ロボットに期待される明確な役割が最初からあるのではなく、社会のどういった場面でロボットが役立つのかを、私たちが考えてつくっていくのだ。そういった幅は、ほかの開発業務ではありえない。

だからこそ、これからもなんでも貪欲に好奇心をもって、私はロボット開発を続けていく。人とロボットの共存があたりまえになる社会は、きっとつくれる。

column

新型ロボットの研究・開発

先進技術をベースとし、様々なロボティクス技術を世の中に伝えて人々の生活に役立てるための研究開発およびサービス化を推進する部署。最新のAI技術やロボット制御技術を活用し、人を助け、人と共に成長し、人と共感できるロボティクス社会の実現を目指している。従来の価値観にとらわれず、ロボティクス応用製品の新しい可能性を探究し続け、社会に役立つ次世代の技術や製品をつくることができる。●仕事詳細:新型ロボットの知能化技術(機械学習/人・環境認識)、ソフトウェア(アーキテクチャ設計、信頼性評価・テスト、レビュー、セキュリティ設計)、電装モジュール(電装システムのコンセプト検討・立案、要求仕様作成、信頼性予測・設計・評価、電気回路設計およびテスト・評価)などの研究・開発等●シリコンバレーをはじめとした海外拠点、多くのビジネスパートナーと協働する機会も豊富。