私は自分に問い続ける。
「この製品はHondaを名のれるか?」

私は自分に問い続ける。
「この製品は
Hondaを名のれるか?」

研究開発(パワープロダクツ)

塚本 啓司

先進パワーユニット・エネルギー研究所/低電圧パワーユニット開発室/チーフエンジニア
※インタビュー内容は取材当時のものです。

大学卒業と同時に大手電子部品メーカーに就職。その後、ガス会社の研究コンサルティング部門に転職し、電子デバイスや電池関連の基礎研究に取り組む。その後、研究成果を製品化につなげるステージを求めて2004年にHondaへ入社。現在は、先進パワーユニット・エネルギー研究所で燃料電池の基礎研究など、内燃機関に代わる次世代パワーユニット開発のスペシャリストとして現場をリードする。

- 職種内容とやりがい -
1からではなく、0から製品を育てたい。

- 職種内容とやりがい -

1からではなく、
0から製品を育てたい。

「Hondaで燃料電池の研究をしています」。そう話すと、きっと誰もがクルマを思い浮かべるだろう。エネルギーを高効率に利用でき、クリーンな燃料電池は、ガソリンエンジンなどの内燃機関に代わる次世代のパワーユニットである。とは言え、パワーユニットがないと成り立たない製品は、四輪や二輪だけじゃない。この先進パワーユニット・エネルギー研究所で研究開発が行われている耕うん機や芝刈り機や除雪機といったパワープロダクツもその一つ。だが、他にもある。たとえば、私が研究員として長年携わっている “住まい”を支えるエネルギー供給システムだ。

既に製品化されているものに「家庭用ガスエンジンコージェネレーションユニット」がある。発電したときに出る熱と電気を有効利用し、高い効率でエネルギーを供給するコージェネレーションユニット。従来は非常に大型で工場やホテルへの設置が一般的だったものを、Hondaは長年培ってきた小型エンジンや発電機の技術を駆使し、家庭に設置できる小型サイズで世に送り出した。発電機を回す役割は“ガスエンジン”が担っている。「人々の暮らしに密着している製品のパワーユニットを、燃料電池で担えないのか」。そんな自分の心の声に従い、背中を押されながら研究開発に没頭、気づけば転職して11年が過ぎていた。

「0から自分の製品を育てたい」。Hondaは、そんな私の情熱を受け止め、自ら行動すれば実現させてくれる。そして、もう一つ私のモチベーションになっているのが、地球規模でお客様に喜んでもらえる製品づくりに携われるということ。クリーンなエネルギーを使いたいという人々の欲求や社会のニーズは、世界中で今後ますます高まっていくと思う。そのとき燃料電池は有効なソリューションになるはずだ。ただ、誤解しないでほしい。いま私が籍を置く研究所で研究員たちが向き合っているのは、燃料電池に限らない。「途絶えることなくエネルギー供給が可能で、環境に負荷をかけないパワーソースとは何だろう?」「将来のために、子どもたちのために、もっと地球に優しいパワーユニットができないだろうか?」。次世代パワーユニットのあるべき姿を、時間が経つのを忘れて議論しながら探究できることに、私は研究開発に携わる人間としてこの上ない喜びを感じている。

- キャリアストーリー -
世界最高性能でも、世に出さない。Hondaは常に120%を求める。

- キャリアストーリー -

世界最高性能でも、
世に出さない。
Hondaは常に
120%を求める。

Hondaは私にとって3つ目の会社だ。最初に入ったのは、大学での電子デバイス研究を活かすために志望した大手電子部品メーカー。3年間勤めた後に転職したのが、ガス会社の研究コンサルティング部門。30代を目前に、ある想いが沸々と込みあげてきた。「自分の製品をつくって世の中に出してみたい」。次の会社として浮かんだのがHondaだった。仕事柄注目していた燃料電池車FCXが話題になっていた。これまで出会ってきたHondaの社員はみんな個性が強かった。私の中でHondaという会社は“革新に向かうパワー”の象徴だった。ただ売れる製品をつくるだけじゃない、人々に夢や希望を与えるメーカー。「これまでの研究をカタチにするステージに立てるかもしれない」。自分の夢、想い、経験を面接官にぶつけHondaに入社。“次世代パワーユニット屋”としての第一歩を踏み出した。

31歳でHondaに転職して以来、決して順風満帆だった訳ではない。最初に配属された先行開発部門。担当を命じられたのは、パワーユニットの中でも特に重要な領域。いきなりの抜擢に震えたが、最終的に私の担当するパートは世界最高レベルの性能を引き出すことに成功した。しかし、喜ぶのは早かった。上司に呼ばれる。「塚本。残念だが今回はお蔵入りだ」。耐久性などの観点から、製品全体としてみた時にお客様に十分に満足いただける製品化の水準を満たせていなかった。120%の良品を目指せ。Hondaのこだわりを肌で感じた。そして訪れた、入社7年目の大きなチャンス。「製品化を目指すコージェネレーションユニットのコンポーネント、全部任せる」。任命されたのは、コンポーネント全体のLPL(最高開発責任者)だった。当然、最終的な製品のゴールを決める役割も担う。その製品が世に出た時、お客様にどれだけ喜んでもらえるか。今度こそ120%の製品を目指す。普通にやったら絶対に達成できない、世間をビックリさせるゴールじゃないとHondaを名のる資格はない。開発メンバーは、はっきり主張する強者揃い。チームを一つに束ね、動かすことの難しさを思い知ったが、だからこそ面白い。「自分たちの創りあげたものがお客様の手に渡り、喜び・驚きの反応をもらいたい」。そんな気持ちをぶつけあいながら、常にお客様視点を忘れずに世の中にインパクトを与える新しい製品を生み出していく。まさに、革新に向かうパワーの源泉だった。Hondaで働くことの魅力を再認識できた。タテ割の組織、分業化の徹底、決められたゴール・・・。そんな過去の職場の風土との圧倒的な違いを感じるたび、私はこの会社を選んで良かったと思う。

そして11年目を迎えた今、私は全く新しい次世代パワーユニットのLPLとして指揮をとっている。まだ開発途中のため詳しくは話せないが、こんな理想がベースになっている。「四輪、二輪、発電機、エネルギー供給システム・・・・・・など、何にでも適用できる燃料電池はできないだろうか?」。ちょっと夢のような話だが、もし製品化にこぎつけられたら、世界中に影響を与えるのは間違いない。うまくいく確証なんてない。でも、だからこそやる意味がある。理想を追い求めて行動するのがHonda。“二階に上げて梯子を外す”という企業文化が、私は好きだ。

column

Hondaのパワープロダクツ研究開発

先進パワーユニット・エネルギー研究所では、幅広い商品開発を行っているため様々な知識、情報が得やすく、一人ひとりのエンジニアが分野にこだわらずに大きな裁量と広い担当領域で、開発者としてのやりがいを強く感じる働き方ができる。●仕事詳細:除雪機、芝刈り機、耕うん機や発電機、船外機などの様々なパワープロダクツのエンジン設計、研究開発(運転試験による性能評価試験、テスト計画の立案、新たな製品、エンジンの企画、提案)、 電装部品のテスト及び解析など ●海外需要が高く、研究開発・生産の海外拠点も多いため、グローバルでの活躍も可能。