CROSS TALK

未来へ向けた
Hondaの“再定義”

  • 中澤 伸廣

    中澤 伸廣

    完成車保証部/製品技術課/課長

    1998年入社。学生時代は機械システムを専攻。「Hondaの四輪に携わりたい」という夢を持ち、Hondaに入社する。入社後は完成車の品質保証を担う部門で経験を積む。品質向上のための施策・方針の企画などを経て、現職に至る。

  • 江原 和昭

    江原 和昭

    埼玉製作所/寄居完成車工場/寄居管理課/課長

    1987年入社。高校の普通科を卒業し、Hondaに入社。一貫して塗装部門に携わり、全プロセスを学ぶ。その間、北米、中南米などへの出張、駐在経験を積む。現在は寄居完成車工場で工場長の補佐として工場全体運用管理のPDCA及び、保全領域のマネジメントも行っている。

  • 金森 啓益

    金森 啓益

    完成車保証部/狭山完成車品質課/課長

    1989年入社。学生時代は電気工学を専攻。Honda入社後は、一貫して保証部門に携わる。2006年に中国・武漢へ、2013年には中国・広州の現地工場に赴任。合計10年、品質保証の責任者として海外拠点をマネジメントした経験を持つ。

この30年で出てきた
新しい課題とは。

中澤:
我々が入社してから30年余り。この間に、車に搭載する機能の普及のスピードが、急速に「家電的」になってきたと思いませんか。以前は高付加価値の機種にしか付けていなかった機能を、間際に発売する機種から設定する、というように。
金森:
たしかにそうです。そして、2機種目からは標準装備、つまり機能として当たり前になるので、我々品質の部門がやるべきことも格段に増えました。
江原:
私が担当している寄居工場は、Hondaの中でも最新鋭の技術が導入されています。これだけ海外に拠点が広がると、日本はグローバルを牽引する“マザー”の役割を果たしていかなければなりません。そういう役割のもと、自動化も進んできています。
金森:
ただし人間は経験値を品質判断に活かすことができますが、ロボットはそういうわけにはいきません。
江原:
そうですね。「家電的」とも言える標準装備の増加、機種の進化に合わせて、一定のペースで追加投資や技術更新が必要になります。そして、ロボットを扱う人間の側も成長していかなければならないでしょう。
中澤:
その点が、30年の間に出てきた新しい課題と言えますね。

守るべきもの
それは完成車の基本にある技術・ノウハウ。

金森:
一方で変わらない、あるいは、変えるべきではないところもあります。我々の仕事である品質はまさにそうです。環境装備、安全装備とさまざまな機能は普及させつつも、「お客さまに安心して乗っていただくために」という芯の部分。ここは変わりませんね。
江原:
社外の人からすれば、時代によって変化しているように見えるかもしれませんが、中にいると「変わった」という印象はないです。もともとユニークな会社ですから。ただ、必ずしも全員が“車好き”というわけではなくなりました。私の場合は、2ドアのプレリュードが好きで入社して、入社後に早速ローンを組んで購入し、夢を叶えましたが(笑)。
金森:
私はHondaの二輪が好きで、学生時代はショールームに通っていました。中澤さんは四輪派ですよね。
中澤:
はい(笑)。もっとも、社会全体としては「電動化を進めなければ」「100年に一度の変革期を乗り切らなければ」という空気はありますが、Hondaの車の作り方、考え方はまったく変わっていないと感じています。
金森:
完成車の基本にある技術やノウハウは守っていかなければなりませんから。ここをおろそかにするわけにはいかないですよね。

「人間の意志」を込めたロボット。

江原:
外的環境は変わっていきますから、もちろんその変化には対応しなければなりません。寄居工場に象徴されるような、ロボットによる自動化はまさにその変化への対応です。単に効率を上げるためのものではなく、検査の質自体を上げるための対応でもあります。
中澤:
ロボットに任せることで品質に寄与するのであれば、その部分はロボットに置き換えていったほうがいい。反対に、ロボットにはできないことが人間にはできる。
金森:
特に我々の品質検査では、8割は人間が行っています。人間の五感はやはりすごいですから、ロボットに置き換えるのはなかなか難しい。人間がやったほうが良い結果につながるのであれば、その部分は残すべきですね。
江原:
最初にもふれましたが、ロボットを使う人間の側に知見を蓄積する必要もあります。「なぜこれをやるのか?」「どういう仕組みでこれが動いているのか?」という、“そもそも”の部分を人間が持っていないと、それこそロボットになってしまいますから。
中澤:
そうならないように、人間の意志を込めたロボットを使うようにしなければなりませんね。
金森:
人間とロボット、それぞれお互いの得手・不得手を補いあうことが大事なんだろうと思います。特にモノづくりにおいてはそうです。

社員一人ひとりの
《これがしたい!》から全てが始まる。

金森:
この30年余りを振り返り、変わったこと、変わらないことを確認しました。その上で改めて、Hondaの強みについて考えてみましょうか。
中澤:
やはり、現場の社員一人ひとりに《これがしたい!》という思いがあることではないでしょうか。《これがしたい!》があると、自分にどんな専門性が不足しているかが見えてくる。そういう社員は、足りない部分を挽回しようとしますから。そして結果的に予想以上のアウトプットを出してくれますよね。我々はそういう社員の活躍ぶりを、何度も身をもって体験しています。
江原:
「原資は人」という風土は昔から変わっていませんね。みんなでモノを作っていくという意識が根付いているからでしょう。学歴も、新卒採用・中途採用の違いもまったく関係ありません。
金森:
伸びている社員は例外なく《これがしたい!》を持っています。自分が思いを持ってやっていけば、あらゆることが実現できる環境と言えますね。

最高の品質のためなら、
職種や技術領域をも超えていく。

中澤:
「家電的」な普及によって、研究所での開発から量産までのリードタイムがどんどん短くなっていますよね。その影響で、我々品質保証が開発の領域にくい込み始めているという傾向があります。
江原:
我々の仕事は時間との勝負です。しかしお客さまに迷惑をかけるわけにはいきません。だからこそ造り手側のプライドとして妥協はしない。開発側から「これで出来るはずだ」と渡された図面を、ただ「わかりました」と受け入れたりはしていないですね。
中澤:
それは我々に《これがしたい!》があるから、と言えます。時には図面が出来上がるのを待たず、「どこまで出来ている!?」と足を運ぶこともありますし。
金森:
ヨーロッパまで出向いて、実際に車を走らせたこともありますよね。そして「そもそも狙っていた品質は何だった!?」という点について、研究所と詰め直すという。
中澤:
そうですね。昨日もヨーロッパとTV会議で議論をしました。幸い、社内にはそういうコミュニケーションツールが発達していますから。フル活用しています(笑)。
江原:
もう開発側も、我々品質保証側の承認が必要であること、そして品質保証側には相当経験が蓄積されているので、簡単に承認をもらえないことに気づき始めています。

Hondaは、
部品性能にとことんこだわる。

中澤:
《これがしたい!》ということで、開発側へのくい込みの他にもう一つ思い出したことがあります。それはHondaは単純な“機能買い”をしない、ということです。
江原:
こういうことができる、と最初から分かっている装置を組み込んで、完成車として販売する手法ですね。たしかに“機能買い”はしていませんね。
中澤:
まず《これがしたい!》があって、「それができるのはこの部品だ!」という発想をするわけです。
金森:
だから目の前にある部品を徹底的に調べて、《これがしたい!》を実現できるかどうか、部品性能にとことんこだわります。部品メーカーさんにもよく驚かれますよね。そのリアクションを見て、逆にHondaの社員が驚くこともありますけど(苦笑)。
中澤:
例えば自動運転を担当している入社数年の若手が、部品の性能を上げるための提案を部品メーカーさんにしたこともあります。それは先ほどの、品質が開発にくい込んでいくようになった証とも言えるでしょう。
江原:
《これがしたい!》という熱意を部品メーカーさんに伝えることが大切ですよね。そうすれば向こうも「もっと良いモノを作って供給しよう」と思ってくれますから。…それにしても、すごい若手ですね(笑)。

誰もが平等にチャンスを
手に入れられる風土。

金森:
こんなふうに若手であっても《これがしたい!》という意志を貫けるのは、その意志を受け入れ、チャンスを平等に与える柔軟な風土があるからでしょう。
江原:
我々のように現場を見ているマネージャー同士で、横のつながりがあることが大きいと思います。多い時には15〜16名のマネージャーが定期的に集まって、飲み食いしながら情報交換をしていますね。「今度、こんなことがしてみたいんだ」「(自部門に)こういう面白いメンバーがいるよ」と、つねに話し合っていますから。
中澤:
先ほど設備の自動化が進んでいるという話がありました。自動化が進むことによって人間、つまり社員一人ひとりにいかにして才能を発揮してもらうべきか、マネジメントを担っている我々も今まで以上に深く考えるようになっていますし。
金森:
《これがしたい!》という社員は、マネージャー同士のつながりを活かして送り出したり、受け入れたり、ということもあります。定期的な人事異動を待っているだけでは、Hondaの柔軟性は活かせませんから。
中澤:
私の部門も、2〜3割は他部門から来たメンバーが占めています。元鉄道系のメンバー、元塗装関係のメンバー…本当に多種多様です。
江原:
マネージャーとしては、面白い社員が頑張っていると異動させず、自部門に抱えたくなるというのが本音です(苦笑)。しかし、その人の引き出しの中身を考えて、もっと適したポジションに送り出すという判断をしていますね。

令和を迎えた現在も息づく
Hondaのフィロソフィー。

中澤:
先日、HondaのOB会に参加させていただいたんです。最高齢の方は100歳という、すごいOB会でした。参加された大先輩の方々からは、本田宗一郎氏の話が次々に飛び出してきて、勉強になりました。中でも印象に残ったのは、ある社員が《これがしたい!》と直訴したら、当時社長だった宗一郎氏は「やりたい人にやらせてあげよう」と判断したという話です。
江原:
未だにHondaのフィロソフィーは息づいていますよね。しかも頭の中で考えたことではなく、現場でしっかりやってきた上でのフィロソフィーですから。やはり現場を知り尽くしている人の言葉は重い。
金森:
本当にそうです。我々にとっては“実践のモノサシ”であり、“行動の教科書”でもある。実際に日々の現場で遂行してみると、「その通りだった」と思えることがたくさんありますから。
中澤:
対現場、対社員だけではなく、お客さまに対しても同様ではないでしょうか。はじめに金森さんがふれていた「お客さまに安心して乗っていただくために」という芯の部分は、Hondaのフィロソフィーに直結していますから。
金森:
そのフィロソフィーが、《これがしたい!》という社員の自主性につながっていると思います。昭和、平成、そして令和を迎えた現在もそれは変わりません。
中澤:
誰かがやってくれるだろう、背負ってくれるだろう、とは考えない。誰もが「自分がやらなければ!」と思っています。
江原:
現場の社員一人ひとりがHondaを背負っています。Honda=大企業、安定企業とは思っていないからでしょうね。つねに現場からボトムアップしていく会社なんです。

再定義しても、
Hondaは変わらずHondaだ。

金森:
結論が見えてきましたね。Hondaの強みはボトムアップである、という。まず現場のあらゆる場所に、《これがしたい!》という“個”が存在しています。その“個”が、専門性などで足りない部分を挽回しながら自分自身を再定義し、周囲からの期待以上のアウトプットを行っています。そのアウトプットの集積が、今後のHondaを再定義していくのではないでしょうか。
中澤:
我々の議論の中で、すでに再定義できている部分もあると思います。外的環境の変化の中で、自らの強みが何か?という部分が揺らぎ始めていたことは間違いありません。それは「これで合っているのか?」という自信が持てなかったからですが。
江原:
今回議論をしてみて、「やはりこれで合っているんだ」という手応えは得られましたよね。Hondaは再定義してみても、やはりHondaだったということです。
中澤:
地理的な面でも、事業の面でも、Hondaにはこれだけ広いフィールドがあります。ですから、やりたいことはきっとHondaの中で見つかるはずです。しかも、誰かに「これだよ」と渡されるのではなく、自分で見つけ出すことができる環境です。「自分がHondaを再定義します!」という人が来たら、すごく楽しく働けるのではないでしょうか。今回の座談会で、私自身、その楽しさを再確認できた思いです。

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